ずっと「いつか」と言い続けてきた家づくり。20代の石山さんご夫妻は「もう悩むのはやめよう」と心を決め、デザイナーの小林さん・木村さんと家づくりを始めました。前半では、物件が決まり、3つのプランから本命を選ぶまでのお話をお届けしました。
後半はそのプランに色とかたちを与えていく時間のお話です。キッチンの水栓ひとつから始まった色選びは、やがて家全体へ広がっていきました。
石山響さん・和香菜さんご夫妻
「使い勝手より、デザイン」。そう迷わず言い切れるのは、自分たちの「好き」に正直だから。白い空間に、ふたりは一滴ずつ色を足していきました。赤い水栓、やわらかな曲線、見せる場所としまう場所。テーマ「hue」に込めた想いまでを辿る、インタビュー後半です。
ずっと「いつか」と言い続けてきた家づくり。20代の石山さんご夫妻は「もう悩むのはやめよう」と心を決め、デザイナーの小林さん・木村さんと家づくりを始めました。前半では、物件が決まり、3つのプランから本命を選ぶまでのお話をお届けしました。
後半はそのプランに色とかたちを与えていく時間のお話です。キッチンの水栓ひとつから始まった色選びは、やがて家全体へ広がっていきました。
おふたりの話を聞いていると、何度も同じところに行き着きます。目にしたとき、心が動くかどうか。
「僕はなんでも、まず『見た目がいいな』と思うところから入るんです。そこから『これはこういう意味があるんだ』って背景を知っていくタイプですね」(響さん)
美容師として、毎日お客様の髪や装いと向き合っている響さん。目で見て「いい」と感じ取る力は、仕事の中で自然と磨かれてきたものなのかもしれません。
家の設備も同じでした。たとえばキッチン。センサーで水が出るような便利な機能は、もちろん魅力的です。それでもおふたりの答えは、はっきりしていました。
「年齢を重ねたら、デザインよりも手間を減らすほうを選ぶようになるのかもしれないですけど。今の私たちは、慣れればいいだけなので。それよりは、見た目が素敵なほうが絶対いいよねって」
不便さは慣れれば気にならなくなる。でも、見るたびに心が躍るかどうかは、慣れでは変わらない。
「使っていて、ちょっといい気分になれる。ご機嫌になれるのは、機能性よりデザインなんです。好きなものに囲まれている時間が多いほど、自分を保てるというか」
そもそも、リノベーションを選んだ理由もそこにありました。
「機能をよくしたいというより、見た目を自分たち好みにしたかった。だからリノベーションだったんだと思います」
色の話はヒアリングの最初から始まっていました。
フローリングにはしたくない。木のぬくもりより、白やグレーのすっきりした空間がいい。そこに、ビビッドな色をアクセントで入れたい。少し無機質で、クリアな世界観。それがおふたりの好みでした。
最初に決まった色はキッチンの水栓です。Instagramでキッチンの写真を見ていて、色のついた水栓があると知ったのがきっかけでした。選んだのは、鮮やかな赤。受注生産の、少し特別な一品です。
赤が決まると、そこから家じゅうの色を考えていきました。赤の近くには、同じ系統で少しやわらげたピンクを選びました。半円のカウンターを包むタイル、赤みのある目地、ベンチの上のほんのりピンクがかった照明。リビングにはパステルグリーン、洗面には水色、トイレにはやさしい黄色。どの色も白が混ざったようなトーンで、カラフルなのに落ち着いて見える色味です。
色を選ぶ時間は、響さんと和香菜さんにとって悩む時間であると同時に、楽しい時間でもありました。
「好きな色の組み合わせがあるんです。僕だったら、ピンクと緑とか。服でもそうだし、雑貨でも。自分で全部そろえるわけじゃないけど、組み合わせを見るのは好きなんですよね」(響さん)
一方の和香菜さんが色の組み合わせを楽しんでいたのは、食卓でした。器が好きで、旅先でも器を探すのが楽しみのひとつ。焼きもの市などにも足を運びます。
「ちょっと今日は豪華にしよう、という日は、献立を決めたら、作る前にお皿を決めて並べるんです。どの料理をどのお皿に盛るか、先にイメージして」(和香菜さん)
服と髪、料理とお皿。ふだんの暮らしの中で、おふたりはいつも何かと何かの組み合わせを楽しんできました。
その感覚は家の色選びにもはっきり表れていました。小林さんが驚いたのは、トイレの内装の色を決めたときのことだったといいます。
扉を閉めて使う小さな空間だから、そこだけで色を決めてもよさそうなもの。けれどおふたりは、扉を開けた瞬間にどう見えるか、ほかの空間とどうつながるかまで考えていました。
「おふたりはトイレのことだけじゃなくて、他の空間のことも頭に入れて色を考えていて。同じ部屋じゃなくても、色が残像みたいに残るからって。そこまで考えられる方は、なかなかいないです」(デザイナー・小林さん)
廊下の床の赤いドットと、キッチンの赤い水栓。同時には見えなくても、歩くうちに赤がつながっていく。一つひとつの色を、家全体の中で選んでいく。
料理とお皿を組み合わせるとき、器ひとつではなく、食卓全体を思い浮かべる。毎日のそんな積み重ねの中で、少し引いて全体を見る目線が自然と身についていたのかもしれません。
この家にはやわらかな曲線があちこちにあります。廊下の入口、キッチンの半円のカウンター、ダイニングのベンチの上の、カーブを描く下がり天井、寝室のヘッドボード、洗面の角丸のミラー。
けれど、ヒアリングの段階で、おふたりが「丸が好き」と話していたわけではありませんでした。
曲線のはじまりは朝の動線です。今の住まいでは、お風呂の鏡で全身を見て、洗面の鏡で髪を整えて、服は別の場所へ取りに行く。朝の準備のたびに、家の中を行ったり来たりしていました。
デザイナーはクローゼットと洗面を一続きにして、朝の準備をひとつの流れで終わらせようと考えました。角がやわらかいと、行き来の動きもスムーズに感じられる。そんな考えから、曲線が少しずつ増えていきました。
提案を受けて、ふたりも曲線が自分たちに合うと気づいたといいます。
「夫婦的にも、あんまり角張ってる感じじゃないんですよね。丸が入っているものって、なんか悪いことがないというか。これといった理由があるわけではないんですけど(笑)」
最後は丸く収まる。曲線はいつのまにかおふたりの家の雰囲気そのものになっていました。
おしゃれな家をつくったおふたり。けれど、本人たちの感覚は少し違います。
「おしゃれって言っていただけるんですけど、本当に全然おしゃれでもなんでもなくて(笑)。飾る場所がたくさんあっても、上手に飾れる自信はまったくなかったりするんです」
だから、見せる場所としまう場所をはっきり分けました。最初は飾る場所をたくさん考えていましたが、キッチンの造作カウンターは一部をタイルの壁に置き換え、キッチン側は引き出しにして、ものをしまえる実用的なかたちに変えてもらいました。
一方で、「見せたい」と思ったところには、とことんこだわりました。たとえば、洗面所の扉。間取りの上では、なくても困らない扉です。
「どこかに扉のデザインがほしかったんです。どうせつけるなら、見えるところに、素敵なものをと思って」
扉につける取手も、既製品では思い描いたものが見つかりませんでした。参考にしたカフェまで調べて、問い合わせをしたこともあったそうです。最後は造作でつくることに。
これだけ多くのことを決めながら、おふたりの意見がぶつかったことは一度もなかったといいます。
「意見が合わなかったことは、一回もないんです。どっちもいいと思っていて、どっちにするか、っていう迷い方。そういうときは、これがいいと思う理由をお互いに話して決めていました」
迷ったことは、と聞くと、少し考えてこう返ってきました。
「たぶん、全部悩んだと思います(笑)。何回も小林さんに絵を描いてもらって」
木村さんにとって、石山さんご夫妻との家づくりは少し特別なものでした。
「普段は、お客様の好みならこうかな、と考えて打ち合わせをするんです。でも、おふたりは好みが私たちととても近くて。こっちのほうがいいんじゃないかなと思ったら、同じことを考えていて。なので自分の家みたいに愛着があります」(デザイナー・木村さん)
新しい家に移ると、暮らしの中で変わることもあります。
これまでは、和香菜さんがスキンケアをしている横で、響さんがシャワーを浴びている。ふたりで話しながら、朝の準備をする時間がありました。
新居では、身支度がひとりで完結します。朝のバタバタが減る、うれしい変化です。
「楽しみでもあるんですけど、ちょっと寂しさもあって」
便利になることと、なくなること。その両方をちゃんと感じながら、おふたりは新しい暮らしへ向かっています。
この家につけられたテーマは、「hue(ヒュー)」。色相や色味を表す言葉ですが、塗料の色のことだけではありません。そのものが本来持っている姿や雰囲気、さらには「美しさ」そのものまで含まれています。
デザイナーがこの家に添えたコンセプトの言葉です。
素材の表情を少し残したクリアな空間
そこに二人のessenceを一滴、二滴と…
それは自分たちらしさを暮らしに落とし込む大切なプロセスでした
淡く繊細な色をいくつか散りばめた空間は
どこかやさしく、楽しく、お互いを包み込むお二人のように調和された場所となります
やわらかな曲線に身をまかせたり、時にはサッカーに熱狂したり
いつも自分たちらしく、美しく時を重ねられるそんな場所となるようにと願って。
配色を楽しむ目も、全体を見渡す感覚も、もともとおふたりの中にあったものでした。ふだんの暮らしで磨かれてきたその目で選んだ色が、家のあちこちに散りばめられています。白い空間に足していったのは、おふたり自身の「hue」だったのかもしれません。
ちなみに、コンセプトに「サッカーに熱狂したり」とあるのは、おふたりが大のサッカー好きだから。今の家の廊下でも、ふたりでパス練習をしているそうです。新しい家の廊下はいまよりさらに広くなります。
最後に、これから家づくりを考える人へ、メッセージをいただきました。
「リノベーションって、こだわりがある人とか、おしゃれな人がやるイメージがあって。私たちも最初は、そんなにおしゃれじゃないし、こだわりもないし、大丈夫かなって思っていたんです」
「でも、始めてみたら、人とは違っても、自分なりのこだわりって出てくるんですよ。私たちはそれがデザインだったけど、人によっては収納だったり、使い勝手だったり。それを引き出してもらえるんです」
自分では気づいていなかった「好き」や「やりたい」も、話していくうちに、少しずつかたちになっていく。家づくりは、その人がもともと持っている色を見つけていく時間でもありました。
石山さんご夫妻が見つけた色は、RENO CAFE「hue」でご覧いただけます。寝室の腰壁と棚の色は、工事の途中におふたりがデザイナーと一緒に塗ったものです。公開は11月14日(土)・15日(日)・21日(土)・22日(日)・23日(月・祝)の5日間。白い空間に散りばめられた、やわらかな色と曲線のなかで、「自分だったら、どんな色を足したいかな」と思い浮かべてみてください。
暮らしは、もっと自由でいい。
RENO CAFEこの家、いま見学できます
RENO CAFE「hue」(マンションリノベーション完成見学会)札幌市西区
11月14日(土)|15日(日)|21日(土)|22日(日)|23日(月)
いま読んだ、その家です。写真では伝わらないところを、歩いて確かめられます。
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