LONDON CALLING

Data
  • カテゴリ
    マンションリノベーション
  • エリア
    札幌市南区
  • 家族構成
    大人2名
  • 築年
    1977年(昭和52年築)
  • 建物面積
    64平米(19.37坪)
  • テーマ
    LONDON CALLING
五輪跡地で出会う欧州の美学

札幌市南区真駒内に広がる「五輪団地群」。1972年の札幌冬季オリンピックの本部跡地に建てられた築47年のマンション群です。

明神さんは学生時代にこの団地に住み、その後、社会人となり仕事でイギリス、ドイツ、フランスに赴任。62歳で定年を迎え、奥様と共に終の棲家として札幌の実家に戻ることを選択。元々は戻るつもりがなかったものの、お母様が大切に暮らしたこの家を手放せないという想いが、終の棲家としてここに住むことを決断しました。

ただ今までの暮らしと比べると手狭で、一度もリフォームされず古びた状態。しかし、ヨーロッパで経験した「古さを受け入れつつ住み続ける」文化に触れてきたご主人は、この家の魅力を引き出せると確信していました。古いままの集中暖房や見えている配管すらも、工夫次第でデザインの一部に変えることができると感じたのです。

ご主人の趣味である切手集めがきっかけで、海外から輸入した「うなぎ」や「カニ」をモチーフにした独特の壁紙を採用。さらに、イギリスのヴィンテージタイルやフランスのアンティーク家具を巧みに取り入れ、古さと新しさを融合させた住空間を作り上げました。

外観は歴史を感じさせながらも、室内はまるでヨーロッパの街角にいるような佇まい。オーナーご夫妻のこだわりが詰まった自分らしい住まいが完成しました。

LONDON CALLING――その声に、応えるように。

今回のリノベーションのテーマにこの言葉が選ばれたのは、単なる響きの美しさや異国感からではありません。そこには、明神さんが長年を過ごしたロンドンという都市への深い敬意と、人生の歩みに対する静かな応答が込められていました。

このフレーズの由来は、第二次世界大戦中にBBCが海外向け放送で使っていた「こちらロンドン(This is London calling)」という呼びかけ。のちにロンドン出身の伝説的パンクバンド「The Clash」が、この言葉を混沌の時代に鳴り響く強いメッセージとして楽曲化し、世界に広めました。

ロンドンでの暮らしの中で、明神さんは「古いものを慈しみ、手を加えながら住み続ける」というヨーロッパならではの文化と出会います。少し不便でも、歴史や味わいのあるものを否定せず、そこに自分らしい暮らしを重ねていく。その柔らかなまなざしに、強く心を打たれたといいます。

この哲学は、今回手がけた築47年の団地リノベーションの根幹を支えるものとなりました。“古さ”とされる要素も、排除するのではなくデザインの一部として迎え入れる。そうした発想は、ロンドンで培われた感性がそのまま投影されたものでした。

自分が育ち、また戻ってきた場所に、ロンドンで育まれた感性を重ねて新しい物語を紡ぐ――それはまさに、「LONDON CALLING」という声に応えるような家づくりでした。

遊び心と気品が調和する、大人の住まいづくり

明神さんの住まいを彩る細部の一つひとつには、20年にわたる欧州生活、とりわけロンドンで育まれた価値観と美意識が息づいています。

光量を抑え、多灯使いによって奥行きと陰影をつくり出すデザインに。天井ではなく壁面を照らすことで、空間に静けさと奥行きをもたらします。インテリアや雑貨の表情を際立たせる、ヨーロッパ的な照明の在り方です。

中でも象徴的なのが、カウンターに置かれた「ネズミのライト」や、ドイツから個人輸入された鮭型のオランダ製ライト。機能と遊び心が共存するその姿に、明神さんの暮らしへのまなざしが垣間見えます。

素材や雑貨にも妥協はありません。ロンドンから輸入した中古レンガタイル、イギリス製のスイッチ、閉店セールで出会ったキツネのぬいぐるみ“Mr.FOX”。さらには、自ら塗装した鉢や、イギリスから取り寄せたユーモラスなガーデン雑貨まで、住まいのすみずみに“らしさ”が宿ります。

これらの選定と設えは、デザイナーに一任するのではなく、明神さん自身が「こうしたい」と丁寧に思いを伝えながら形にしてきたもの。それは、単なる装飾ではなく、「古さを受け入れ、楽しむ」というロンドンでの暮らしの本質を、自身の住まいで静かに表現されていたのです。

細やかなこだわりの先にあったのは、自分らしく心地よい日常を紡ぐための工夫たち。懐かしさもユーモアも、すべてが“愉しむ暮らし”へとつながっています。

【オーナー様の声】「ここに戻ってきて、本当によかったと思っています」

この家は、母が大切にしてきた思い出の場所でもあり、私にとっても原点のような存在でした。長く離れていた札幌に戻ることになり、ここでの暮らしをもう一度自分らしく整えたいと思ったのがリノベーションのきっかけです。

古さを隠すのではなく、団地らしさを活かしながら、自分の好きな色や素材で居心地の良い空間をつくりました。造作の本棚には、これまで集めてきた本や切手のアルバムを並べています。静かな時間にページをめくると、懐かしい記憶や旅の景色がよみがえり、心が落ち着きます。朝の光や冬の暖かさに包まれながら、「やっぱりここに戻ってきてよかった」と感じています。

担当デザイナーからメッセージ

初回のお打合せ前に、壁紙サンプルとイメージ画像の入ったファイルをお渡しいただいた瞬間から、「これは間違いなく楽しい家づくりになる」と確信していました。

人生の大先輩であるお客様との打合せはいつも刺激的で、気づけばトイレにも行かず5時間話し込むことも。発想の転換や提案のやり取りを重ねながら、没頭するように進んだこのプロジェクトは、一人の設計士としてかけがえのない経験となりました。

真駒内でイギリスの風を感じる唯一無二の住まいが完成しました。ご夫婦仲良く、お酒を楽しみながら心豊かな日々を過ごしていただけると嬉しいです。

デザイナー:宮島義直

担当デザイナーからメッセージ

玄関ドアをあけるとそこには異国の世界が広がっていました。初めてお伺いしたときに、こんなにも物が入ることで世界が変わるのかと衝撃に近い驚きがあったことを鮮明に覚えています。

お打ち合わせ時から、こうしたいという軸をお持ちで、その軸に対してさらに住みよく、心地よくするにはというところに時間をかけて、家づくりができたのではないかなと思っています。

タイトルにあるようにロンドンでの生活から発想を得ている部分が多いですが、それだけでなく、旅行で訪れたアフリカやアジアの小物なども、見事にmixされたインテリアは写真でも伝わりきらない魅力に溢れています。家というものの可能性の広がりを感じる貴重な経験となりました。

お酒が大好きなおふたり、ソファで、キッチン前のカウンターで、本棚の前で。いろんな居心地の良い場所で、楽しい日々を過ごしていただけると嬉しいです。

デザイナー:宮島明里

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