「5つの広い」の奥にあったもの――ひとり気ままに暮らすマンションのリノベーション【前半】

加藤麻衣さん(仮名)

長く賃貸でひとり暮らしをしてきた加藤さんが、ある朝ふと家づくりに動き出しました。条件に並べたのは「5つの広い」。その奥にあった「余白が欲しい」という願いを辿る、インタビュー前半です。

家がなくなったら困る、と思った朝から

家づくりは、間取りや設備の”正解”を探す作業ではないのかもしれません。

初回のヒアリングの日、打ち合わせ室からは、何度も楽しそうな笑い声が漏れていました。初めて会ったはずの担当スタッフと、気づけばすっかり意気投合している――加藤麻衣さん(仮名)の家づくりは、そんな空気の中で始まりました。よく笑い、思い立ったらすぐ動き、話す相手まで明るくしていく人です。

長く賃貸でひとり暮らしをしてきた加藤さんが、ある朝ふと目を覚ました瞬間から始まった家づくりは、自分の中に眠っていた願いをひとつずつ確かめていく時間になりました。

10月3日(土)から2週間限定で開催するRENO CAFE「.scene」(マンションリノベーションの完成見学会)に先立ち、加藤さんに家づくりの記憶を辿っていただきました。インタビューの前半は、新築マンションへの違和感から、物件と出会うまでのお話です。

新築マンションは、賃貸より狭かった

加藤さんが初めて「家を買う」ことを考えたのは、コロナ禍の少し前でした。

「資産になるとか、家賃を払い続けるのがもったいないとか、そういうところから新築マンションを見に行ったんです。でも、なにかが迫ってきたんですよね。間取りも全部決まっていて、賃貸よりも狭く感じて。これに高いお金を出して買うのか、って」

そこで一度、家の話は加藤さんの中から消えました。月日が経ち、昨年になって友人から「マンション買わないの?」と聞かれたときも、特にピンとは来なかったといいます。

「このまま賃貸で行くんだろうな、と思いながら流していました」

ある朝、突然に

けれど、頭の片隅には、いくつかの言葉が残っていました。職場で「家、買わないの」と言われたこと。ちょうど保険の見直しをしていて、「病気で働けなくなったとき、家賃が払えなくなる備え」という話を聞いたこと。

「そこからまた時間が経って、ある朝パッと起きたときに、急に思ったんです。家賃が払えなくなったら、家がなくなったら困るな、って」

その日の朝、加藤さんはRENOVESのモデルルーム「kiro」の見学会に予約を入れ、翌日には足を運んでいました。迎えたのは、コンシェルジュの村上さんでした。

マンションモデルルーム「kiro」のリビング。リビングとダイニングを仕切る内窓が印象的

「安心材料になる」と言われて

加藤さんが村上さんに話したのは、家が欲しいというより、賃貸のままでいることが急に不安になった、ということでした。毎月の家賃は、払えている今は問題にならない。けれど、もし払えなくなったら、住む場所そのものがなくなってしまう。

「買ったら、その不安は小さくなるのかな、と思ったんです。村上さんとお話しして、家を持つことは1個の安心材料になるよね、と」

一方で、家を買うこと自体を「リスク」と感じる人もいます。大きなローンを背負って、もし暮らしが変わったらどうするのか。加藤さんの中にもその怖さはありました。

「買ったあとに、たとえば住み替えるみたいなことになっても、どうにかなるよ、という話も村上さんがしてくれて。先が見えたというか。それで安心して、踏み出せたところがあります」

賃貸のまま「払えなくなったら困る」と思い続けるより、家を持って、もし何かあればまた考えればいい。そして、その日の会話はこう締められました。

「買う・買わないは別にして、買う前提で、まず3ヶ月と決めて動いてみるのもいいですね、という話になって」

大きな決断を迫るのではなく、いつでも引き返せる小さな一歩。その軽さが、あとから振り返れば流れの始まりになっていました。

友人の家が、良すぎた

なぜRENOVESだったのか。加藤さんの答えは、とてもシンプルでした。

「友人がRENOVESさんで新築を建てていて。行くたびに、”本当に良かった”って、ずっと言っていたんですよね。だから、それしか頭になかったです。インスタとかで他の会社を見たりはしていましたけど、お話を聞きに行くまでにはならなかった」

比較検討をしたわけではありません。誰かの暮らしが、心から満足している姿を近くで見ていた。それが、加藤さんにとって、いちばん確かな情報でした。

一軒家の夢と、小さな平屋のようなマンション

もともと加藤さんの中には、一軒家への憧れがありました。

「一軒家も夢はあったんですけど、ひとりではさすがに難しいので。マンションでも、小さい平屋だと思えばいいかな、と思いました」

新築マンションのような、決まった間取りの狭さは嫌だった。でも、賃貸のままでも、それほど困っていたわけではない。

「今の暮らしに、そんなに不満があったわけでもなくて。でも、家を持つことが1個の安心になるんだったら、せっかくなら狭いマンションじゃなくて、広々していて、自分が暮らしやすい形になったらいいなと思ったんです」

中古マンションを、自分の暮らしに合わせてつくり直す。一軒家の夢は、「小さな平屋のようなマンション」というかたちで、少しずつ現実に近づいていきました。

リノベーション前の様子。あまり手をかけられていない状態でした

物件は、翌日にやってきた

kiroの見学会のあと、加藤さんはRENOVESのマンションセミナーにも参加しました。そして物件探しは、驚くほど短く終わります。

「知人に、物件を見るのが好きな人がいて。”条件を言ってみて”と。全部思いのままに言ったら、次の日に”これだ”って持ってきてくれたんです。それが、この家でした」

さっそく内覧に行くと、伝えた条件にぴったりすぎるほど合っていた。窓の向こうには、山の緑も見えました。しかもそこは、RENOVESが以前にもリノベーションを手がけたことのあるマンションでした。

「この家がなくなったら、もう後悔するなと思って。他は見ないで決めちゃいました」

何をやってもダメなときは、何をやってもダメ。でも、これは乗っていい波だ――。そう感じたまま、加藤さんは決めました。中央区、約82㎡の3LDK。のびのびと暮らす、新しい家が、こうして見つかりました。

デザイナーの高田さん。当時の打ち合わせを振り返ります

「土間が欲しい」から始まったヒアリング

物件が決まって迎えた、初回のヒアリング。冒頭の笑い声が漏れていたのは、この日のことです。

「どんな暮らしがしたいですか」と聞かれて、加藤さんが真っ先に口にしたのは「大きな土間スペースが欲しい」でした。キャンプ道具を置いて、映画を見て、本を読む場所。デザイナーの高田さんにとって、マンションのヒアリングで最初に「土間が欲しい」と言われたのは、初めてのことだったといいます。

2回目の打ち合わせには、A4のシートを持ってきました。伝えるのが苦手だから、書いたほうが伝わる。そう考えて、物件探しで大事にした条件と、朝と夜の過ごし方、休みの日にすることをまとめたものです。

並んでいたのは、玄関が広い、お風呂が広い、ランドリースペースが広い、洗面所が広い、シューズクローゼットが広い――「5つの広い」。なぜ、こんなにも「広い」が必要だったのか。その理由は、もっと手前にありました。

加藤さんがご準備された要望シート。文字だけではなく気になる写真も集めていただきました

「広い」の、その奥に

インタビューの中で、「最初はどんな家にしたいと思っていましたか」と聞かれた加藤さんは、少し考えてからこう答えました。

「床に、大の字で寝たい。今は狭くてできないんですよね」

テレビも、床に座って見たい。本当はヨガやストレッチもしたいけれど、今の家では手を伸ばせばどこかにぶつかる。シートに並んだ「広い」の奥には、加藤さんの育った環境がありました。

「4人兄弟で、団地で育ったんです。自分の部屋はなくて。おばあちゃんの家も、みんなで低い座卓を囲んで座るような、床が近い暮らしでした。だから床が落ち着くのかもしれない」

18歳で札幌に出て、ひとり暮らしを始めたときは、めちゃくちゃテンションが上がったといいます。ようやく手に入れた、自分だけの城。けれど、暮らすうちに家具や荷物は増え、部屋はどんどん狭くなっていきました。

「洗面所に行くのに、干した洗濯物をくぐらないといけないんです。それで照明も隠れて、暗くて。それがいちばんのストレスですね」

新築マンションを見て「狭い」と感じた理由も、賃貸のままでいいと思いながらどこかで満たされていなかった理由も、ここに繋がっていたのかもしれません。自分の部屋がなかった子ども時代から、ずっと胸のどこかにあった願い。誰にも邪魔されない、自分らしい空間が欲しい。

「とにかく、余白が欲しかったんだと思います。狭いことが、自分の中でストレスなんだなと気づいて」

ここから、家づくりが始まる

ヒアリングを経て、加藤さんが次に向かったのは、デザイナーの高田さんと宮島さんによる最初のプレゼンテーション。それは、加藤さんの言葉を借りれば「笑いあり、涙あり」の時間でした。

家の話をする前に、デザイナーが自分の高校時代から語り始めたプレゼン。「土間」と「余白」という言葉が、家のどこに、どんなかたちで置かれていったのか。そして、この家のテーマが「.scene」と名づけられるまで。

インタビュー後半は、次回お届けします。

加藤さんが辿り着いた家は、10月3日(土)から2週間限定で開催するRENO CAFE「.scene」でご覧いただけます。ひとり気ままに暮らす女性の家を、ぜひその場で感じてみてください。

RENO CAFEいま、見学できる家があります

「ひとつの家に、いくつもの居場所を」RENO CAFE「.scene」(マンションリノベーション完成見学会)札幌市中央区 10月3日(土)|4日(日)|10日(土)|11日(日)|12日(月) 読んだ家とは違いますが、RENOVESの家づくりを実際の空間で確かめられます。 見学会の詳細・予約